敷地のカタチ
奥行17m、間口4.5mの細長い、いわゆる”うなぎの寝床”と言われる敷地。道路は北側に面し、両脇は3階建ての住宅と共同住宅に挟まれ、都心の谷間のような印象となっていました。幸いなことに、敷地の奥は南側ということになり、逆に隣家は北側からの斜線の影響を受けるため、2階部分まではこの先も光を遮るものが建つことはありません。それでも、1階の部分は、3階建ての建物に挟まれていることで、うっそうとした雰囲気を拭えませんでした。
建物の大きさと位置
細長い敷地のため、幅を無駄なく使えるように建物の大きさを決めていく必要があります。横幅は敷地の幅によって決められる制限があるので、自然と南北方向に長い建物となることになります。両脇は3階建ての隣家が迫っているため、両サイド方向には、視線が抜けるような気持ち良さを得ることはできませんでした。そのため、視線は、敷地奥の南側へと抜けていくように誘導するような計画を考えました。細長い建物というのは、建物の真ん中あたりは、どうしても暗くなりがちです。この条件を建物にどういった形で落とし込んでいくかをしっかり検討していくことになります。
また、両サイドにはプライバシーを考慮しながら、風通しの為の窓を設けることとしました。駅前の商店街にほど近い立地の為、防犯に配慮した計画にもしています。
デザインの構成
この敷地では、唯一視線が抜け、光を求めることができるのは、敷地奥の南側になります。この光を最大限に生かすために、道路側を含めた両サイドの3方向からは、光をできる限り絞っています。奥行を利用して、空間が段階的につながっていく構成を計画しました。光を絞ることと、段階的につなげることにより、差し込んでくる光も段階的に明るさを変えていくことになります。光の強弱を建物のアクセントとして楽しむ事ができる空間を目指しました。
建物を横から考える
隣家の視線を避けながら、光を段階的に取り入れるために、道路側から見ると奥に進むにつれて階段状にスキップし、レベルが上がっていく計画としています。南の端では同じ2階部分でも、隣家の2階より高い位置となり、周囲からの視線をシャットアウトできせっかく入ってくる光を十分に楽しむためには、光を取り入れるとともに、周囲の視線を気にしない空間とすることがとても大事です。都心の谷間であっても、窓を開け放して、生活できるような開放感を手に入れることが可能となりました。
建設地:東京都世田谷区
用途地域:第1種低層住居専用地域
敷地面積:81.24㎡(24.57坪)
1階床面積:37.87㎡(11.45坪)
2階床面積:36.81㎡(11.13坪)
3階床面積:29.75㎡(8.99坪)
延床面積:104.43㎡(31.59坪)
建築面積:42.87㎡(12.96坪)